義務教育のネットリテラシー教育における課題とは？対策や効果を解説

家庭間のデバイス所持状況の格差

義務教育におけるネットリテラシー教育では、家庭間のデバイス所持状況の格差が大きな課題となっています。タブレット端末を複数所持する家庭がある一方で、まったく所持していない家庭も存在します。また、スマートフォンの機種や通信環境にも大きな差があり、経済的な理由でデバイスの更新や修理が困難な家庭も少なくありません。

このような格差は、オンライン学習やデジタル教材の活用に支障をきたし、教育機会の不平などにつながるおそれがあります。そのため、学校での共用端末の整備や、経済的支援制度の充実など、格差を是正するための取り組みが求められています。

通信環境や利用制限の多様性

義務教育におけるネットリテラシー教育では、各家庭のインターネット利用に関するルールや価値観の違いが、指導を難しくする要因となっています。

たとえば、SNSの利用開始年齢、ゲームの課金制限、動画視聴の時間帯など、家庭ごとに異なる基準で管理されているのが現状です。また、保護者自身のデジタルリテラシーにも差があり、子供への指導方針が大きく異なることも。

学校での一律的な指導だけでは、こうした家庭環境の多様性に十分対応できません。そのため、保護者向けの啓発活動や個別相談の機会を設けるなど、家庭との連携を強化する取り組みが求められています。各家庭の実情に寄り添いながら、適切な利用環境を整えていく必要があります。

個別の使用実態に応じた指導の難しさ

義務教育でのネットリテラシー教育において、生徒それぞれの使用実態に合わせた指導を行うことには大きな課題があります。生徒によってスマートフォンやタブレットの利用開始時期や使用頻度が大きく異なります。

• 小学校入学前からスマホを所持している生徒
• 中学生になってから初めてスマホを持つ生徒
• 平日はほとんど使用しない生徒
• 1日数時間SNSを利用する生徒

このように個々の生徒で異なる利用状況に対し、一斉授業形式での画一的な指導では十分な効果が得にくい状況です。

休暇中の利用時間の急増

東御市の調査によると、平日と休日でインターネット利用時間に大きな差が見られます。小学6年生の場合、平日は1時間程度の利用が最も多いのに対し、休日は2時間程度が最多となり、3時間以上の長時間利用が45％にまで増加します。

中学2年生の場合はさらに顕著で、平日は2時間程度の利用が最も多いのに対し、休日は4時間程度が最多となり、3時間以上の利用が67％に達します。とくに懸念されるのは、小学6年生の7％、中学2年生の4％が休日に10時間も利用しており、依存症が疑われる状況です。

また、コロナ禍での約3ヶ月間の長期休暇中は、ゲーム・SNS・動画視聴の利用時間が「ものすごく増えた」「少し増えた」と回答した割合が、小学6年生で55％、中学2年生で61％に上っています。

保護者の監視が行き届かない時間帯の問題

保護者の監視が行き届かない夜間や放課後の時間帯は、ネットリテラシー教育の死角となりやすいといえます。以下が指摘されています。

• 保護者が仕事などで不在の放課後（15時-19時）
• 就寝前の自室での利用時間（21時以降）
• 塾や習い事の移動時間での無監視利用

とくに夜間については、SNSでの知らない人とのやり取り増加や不適切なサイトへのアクセス、オンラインゲームの長時間化といったリスクが高まります。

これらの時間帯での対策として、スマートフォンの利用時間制限機能の活用や、フィルタリングソフトの導入が推奨されます。ただし、強制的な制限だけでなく、子供自身が危険性を理解し自制できる力を養うことが大切です。

オンラインゲームやSNSの過度な利用

子供たちのネット利用時間が増加する中で、とくに警戒すべきなのがオンラインゲームやSNSの過剰な利用です。ゲームやSNSは双方向性があり、他者とのコミュニケーションを通じて利用時間が長くなりがちです。以下のような問題が指摘されています。

• 睡眠時間の減少による学習への影響
• 課金トラブルの発生
• オンライン上での知らない人とのやり取り
• SNSでの誹謗中傷やいじめ
• ゲーム依存による生活リズムの乱れ

これらの問題に対しては、以下の対策が効果的です。

ただし、対策を実行する際は子供との対話を重ねながら、段階的に進めていくことが大切です。

実際の使用場面に即した学習

家庭でのネットリテラシー教育の最大の利点は、子供の実際のインターネット使用場面に即して学習できる点です。学校での一般的な指導と異なり、子供が普段使用しているデバイスやアプリを用いながら、具体的な状況に応じた指導が可能となります。

• SNSでメッセージを送る際の適切な言葉遣いの確認
• オンラインゲームでのチャット利用時のマナー
• 動画視聴時の時間管理方法
• 不適切なコンテンツへのアクセス制限の設定

とくに重要なのは、子供が実際に困っている場面や疑問に感じている状況をその場で解決できる点です。これにより、学んだ内容が即座に実践に結びつき、より深い理解と定着が期待できます。

家族間のルール作りによる意識向上

家族間での話し合いによるルール作りは、子供のネットリテラシー向上に大きな効果があります。保護者からの一方的な制限ではなく、子供と一緒にルールを考えることで、主体的な意識が芽生えます。効果的なルール作りのポイントは以下の通りです。

これらのルールは、紙に書いて目につく場所に貼るなど、視覚化が効果的です。また、定期的な見直しの機会を設け、子供の成長に合わせて柔軟に変更していくことをおすすめします。

年齢に応じたペアレンタルコントロール

子供の発達段階に合わせて、段階的にスマートフォンやタブレットの利用制限を設定することが重要です。低学年では、保護者が選んだ教育アプリのみを利用可能にし、利用時間も1日30分程度に制限することをおすすめします。

中学年になれば、信頼できる動画配信サービスの視聴を許可し、1日1時間程度まで利用時間を延長。高学年では、SNSの利用を段階的に解禁しつつ、フィルタリング機能は継続します。

ただし、制限を緩和する際は必ず子供と話し合い、適切な利用方法を確認しましょう。トラブルの対処法も事前に説明し、保護者に相談できる関係性を築くことが大切です。

デジタルデトックスの実践

デジタルデトックスとは、デジタル機器から意識的に距離を置く取り組みのことです。親子で実践することで、効果的なネットリテラシー教育につながります。実践は以下の3段階で進めるのがおすすめです。

実践により目の疲れや睡眠の質が改善され、家族間のコミュニケーションも活性化します。まずは無理のない範囲で始め、徐々に

デトックス時間を延ばしていくことが継続のコツです。